七円玉の読書記録

Researching on Nichiren, the Buddhist teacher in medieval Japan. Twitter @taki_s555

雑記:「立正安国論」真蹟翻刻の注記追加について

以前、日蓮立正安国論」の真蹟翻刻をしたが、調査をさらに進め、注記に反映した。今回は以下の作業を行った。

○注記した漢字について、諸橋轍次大漢和辞典』(大修館書店、修訂第二版、諸橋大漢和と略記)で調べ、追記した。漢字の通番、巻数-頁数(通巻頁数)の体裁で表記した。

○真蹟を底本とした遺文集である『平成新修日蓮聖人遺文集』(米田淳雄編、連紹寺、1995年、平成新修と略記)の読み下し文の校訂箇所を参照し、必要な箇所については追記した。

○その他、立正安国論広本真蹟との比較、文字の修正を行った。

○勧持品二十行の偈の引用(真蹟第十~第十一紙、『新編日蓮大聖人御書全集』21頁)については、次のように注記してみた。
法華経云悪世中比丘邪智心諂曲未
得謂為得我慢心充満或有阿練若
納衣在空閑自謂行真道軽賤人
間者貪著利養故与白衣説法為世
所恭敬如六通羅漢乃至常在大衆
中欲毀我等過*向国王大臣婆羅門
居士及余比丘衆誹謗説我悪謂是
邪見人説外道論議濁劫悪世中多
有諸恐怖悪鬼入其身罵詈毀辱
我濁世悪比丘不知仏方便随宜所説
法悪口而嚬蹙数数見擯出〈已上〉

*: →故。引用経文より。立正安国論広本では「禍」(第七紙21行目)。過が故の音通になっていないことから、日蓮は「我等の禍(過)を謗らんと欲す」と読んでいたのではないかという仮説を立て、今後検証していきたい。この法華経勧持品の二十行の偈中の「過」がある句は、四句一行からなる偈の9行目に当たるが、変則的であり、前半二句は8行目の四句に入り、後半二句は10行目の四句に入る(『現代語訳 立正安国論池田大作監修、創価学会教学部編、聖教新聞社、38頁参照)。つまり「我等を謗らんと欲するが故に」(『妙法蓮華経並開結』創価学会版、2015年、419頁参照)で一旦文が切れる。この辺りの読みと先の仮説が関係しているのだろうか。■

「立正安国論」真蹟翻刻①第一紙~第十二紙 - 七円玉の読書記録

「立正安国論」真蹟翻刻②第十三紙~第二十四紙 - 七円玉の読書記録

「立正安国論」真蹟翻刻③終 第二十五紙~第三十六紙 - 七円玉の読書記録