七円玉の読書記録

Researching on Nichiren, the Buddhist teacher in medieval Japan. Twitter @taki_s555

デヴィッド・マクマハン「仏教の近代主義(仏教モダニズム)」の要約と議題の和訳

David L. McMahan “Buddhist Modernism”は、米国フランクリン・アンド・マーシャル大学教授のマクマハン氏が編纂した“Buddhism in the Modern World(近代世界における仏教)” Routledge, 2012の一章である。本論部分は『ブッダの変貌――交錯する近代仏教――(日文研叢書)』(末木・林・吉永・大谷編、法蔵館、2014年)で和訳・収録されている(田中悟訳)。ここでは、同書では省略された原書の要約Summaryと議題Discussion questionsと題された部分を訳した。

「Buddhist Modernism」という語は『ブッダの変貌』で田中氏や末木文美士氏によって「仏教モダニズム」と翻訳されているが、末木氏は別書で「仏教の近代主義」とも訳している(『日本仏教入門』角川選書2014年、2012年の講演を収録・加筆)。どちらの訳語も本論を読まなければ意味がわからないのは致し方ないが、ここではより和訳の操作が強い「仏教の近代主義」を採用した。

要約
・近代において、仏教の諸形態は、伝統仏教の教理や実践が西洋近代主義をルーツとする概念、社会形態、文化活動と組み合わさって世に現われた。
・仏教の近代主義(仏教モダニズム)は、植民地時代に帝国の威力や宣教師による脅威に対抗するために生じた、さまざまな改革運動を起源とする。
・こうした運動の一側面として、近代科学と適合した“理性の宗教”として仏教を再解釈したことが挙げられる。アナガーリカ・ダルマパーラは、このテーマを伝えた最重要人物である。
・仏教の近代主義は、その他の形態としては、個人的な体験、直感、アートを強調した。こうした文脈で仏教を伝達する上で、鈴木大拙は特に影響力を持った。
・特に西洋では、仏教の近代主義は、多くは西洋心理学からの解釈の成果といえる。
・瞑想は、より広がりを見せ、在家仏教徒のみならず非仏教徒も行えるようになった。
・仏教の近代主義における最新のトレンドは、爆発的に行われている、瞑想に関する科学的な研究である。
・仏教の近代主義を特定の正確に定義されたものと考えることはできない。むしろ多様な社会でそれぞれで異なる“近代性”に応じて、異なった様態をとる。

議題
・近代世界にたまたま居合わせることになった仏教と、仏教の近代主義との違いは何であろうか?
・仏教の近代主義がもつ他と区別できる顕著な特徴とは何だろうか? その担い手たちは、どのようにして近代主義の特定の言説を用いたのか?
・科学と仏教を関連付けることの長所や短所は何だろうか?
・仏教の近代主義に対する批判は何に似ているだろうか? これについて①研究者の視点から、②仏教者の視点から想像してみよ。■