七円玉の読書記録

Researching on Nichiren, the Buddhist teacher in medieval Japan. Twitter @taki_s555

2021-01-01から1年間の記事一覧

日蓮「開目抄」:日乾による真蹟対校本の翻刻⑭

前回の終わりにある「天台宗より外の諸宗は本尊にまどえり」について、私は「……諸宗は教主にまどえり」と換言できるのではないかと仮説を提示したが、今回の範囲でも「教主」と「本尊」が同義に扱われていると見られる。その考察は後日に期す。書誌情報、凡…

デヴィッド・マクマハン「仏教の近代主義(仏教モダニズム)」の要約と議題の和訳

David L. McMahan “Buddhist Modernism”は、米国フランクリン・アンド・マーシャル大学教授のマクマハン氏が編纂した“Buddhism in the Modern World(近代世界における仏教)” Routledge, 2012の一章である。本論部分は『ブッダの変貌――交錯する近代仏教――(…

日蓮「開目抄」:日乾による真蹟対校本の翻刻⑬

翻刻を通して再読してみると、教主(本尊)論として吟味したい一節の多い箇所である。「或は云く『法華寿量品の仏は無明の辺域、大日経の仏は明の分位』等云云」(137頁)と空海が主張したとする文は、「撰時抄」「報恩抄」等における日蓮による空海批判で頻…

日蓮「開目抄」:日乾による真蹟対校本の翻刻⑫=開目抄下

今回から下巻となる。便宜上、130頁まで翻刻する。上下巻それぞれの冒頭と終わりの「開目抄上巻」「開目抄下巻」は棒線で削除されており、日蓮自身が上下に分巻した筆跡がなかったことになるから、身延山所蔵の真蹟は全部通しで一巻であったと解されている。…

日蓮「開目抄」:日乾による真蹟対校本の翻刻⑪

十頁ずつ連載しているが、今回は区切りがよい開目抄上巻終わりの113頁まで翻刻する。終盤、法華経方便品・略開三顕一から説き起こされた「具足」義のサンスクリット語・漢語による解釈については、少々注記したものの、課題が多いので時間をかけて調査し、後…

日蓮「開目抄」:日乾による真蹟対校本の翻刻⑩

「史的文字データベース連携検索システム」(https://mojiportal.nabunken.go.jp、以下、史的文字DBと略す)が公開された。これは奈良文化財研究所が中心となって運営するもので、国内外の複数機関が所蔵・管理する史的文字(木簡・紙面)の画像を横断的に検…

「開目抄」における法華経勧持品・不軽品の引用文の合成

「日蓮「開目抄」:日乾による対校本の翻刻⑧」の範囲で、日蓮(1222-82)は、自身の忍難と慈悲は天台・伝教に優れていると言っておきながら、すぐさま一転して、私は法華経の行者ではないのか?と疑問を呈した。翻刻⑨では、また一転して、法華経勧持品の文*1…