七円玉の読書記録

Researching on Nichiren, the Buddhist teacher in medieval Japan. Twitter @taki_s555

雑記:日蓮「開目抄」について

8月は読書や研究がはかどったものの、投稿は滞った。日蓮の「開目抄」について調べていた。

○開目抄に引用された「欲知過去因、見其現在果」以下の経文については、日蓮は「心地観経に曰く」としているが、これは同経の現在の本にはなく、諸経要集等にある。この文の出典について調査を続ける中で、善因善果、悪因悪果という因果応報の観念が、平安・鎌倉期の日本でどのように受容されてきたかに興味を持ったが、そのことが法華経の受容のされ方にも影響していることがわかった。

○開目抄の結論部分にある「日蓮は日本国の諸人にしうし父母なり」との一節は、諸本により「したし父母也」(日乾の真蹟対校本)あるいは「主師父母也」(日存写本)と、表記に違いがある。「しうし父母」については、大石寺の日寛が「開目抄愚記」で、自身は「シタシキ父母ナリ」の本を所持していたようだが、「異本ニ云クシウシ父母ナリ云云。今謂ク異本最モ然ル可キ也」と記している。現在の日蓮文集においては、「しうし父母」は創価学会、「したし父母」は立正大学および日蓮宗系、「主師父母」は大石寺系のようであるが、諸本を参照し成立過程を検証している。
追記。つまり大石寺が『平成校定日蓮大聖人御書』で26世法主の日寛の説を採用せず、日存本を用いたこととなり、興味深い事例である。以上の点については日乾対校本を翻刻し、その中で詳しく調査している。日蓮「開目抄」:日乾による真蹟対校本の翻刻① - 七円玉の読書記録

○過去記事については、若干の追記、修正を加えた。■