七円玉の読書記録

Researching on Nichiren, the Buddhist teacher in medieval Japan. Twitter @taki_s555

国立国会図書館ウェブ公開中の日蓮書簡集について

近代から出版された日蓮(1222-82)の書簡集は、国立国会図書館(NDL)で閲覧可能であり、中には版権切れからウェブ公開され、ダウンロードできるものがある。しかし入力された書誌情報が不正確なためか、見つけづらいものがある。ここではウェブ公開中のものをまとめてみた。(書誌IDにリンクを貼った)

日蓮聖人御遺文(=縮刷遺文、加藤文雅編、本間解海・稲田海素対校、霊艮閣版)
二つの版を見つけた。
本書は縮刷遺文と通称される。確かに後述する高祖遺文録の縮刷版という意で、内題は「高祖遺文録」なわけだが、検索しても見つけにくい。
①初版、明治37年
国立国会図書館書誌ID000000466621
見出し語が「日蓮上人御遺文」としてヒットする。誤記なので訂正してほしい。
②第15版、昭和10年、第二続集有
国立国会図書館書誌ID000000758527
大正9年に第二続集として増補したものの重版。見出し語が「高祖遺文録 15版」としてヒットする。

高祖遺文録(日明・小川泰堂編)
二つの版を見つけた。
明治13年、全30巻、木版本、大本
国立国会図書館書誌ID000000466488
版面が木活字による印刷で、いわゆる大本であろう。
②明治19-20年、全16巻、小本
国立国会図書館書誌ID000000466489
こちらは版面が銅活字による印刷で、いわゆる小本であろう。

高祖遺文録匡謬(小林日董著)
明治34年
国立国会図書館書誌ID000000466490
高祖遺文録の大本の表記について、疑わしきもの、真筆との相違や脱漏について指摘したもの。

類纂高祖遺文録(長滝泰昇・山川智応編)
大正3年、師子王文庫
国立国会図書館書誌ID000000543444
高祖遺文録を再編。

刊本録内御書
録内御書の刊本は様々あるが、確認できたものは以下の通り。両者とも書誌情報では寛永年間の刊行、同種活字が用いられていると解題されている。録内御書の刊本は寛永年間では、①寛永十九年四良左衛門版(1642)、②寛永二十年庄左衛門版(1643)、③寛永二十年勘左衛門版があり、そのいずれかであろうか。
①録内第2-3巻=開目抄(上下2冊)
寛永年間
国立国会図書館書誌ID000007280022
遊び紙に「恵宅日義」、末丁裏に「義天日応」「存長日侍之」(第2冊は「存長日侍」)の墨書がある。部分的に注記を書入れ。実業家・古書収集家高木利太(1871-1933)の旧蔵(解題より)。
②録内第16巻=兄弟抄、十法界明因果抄、祈禱抄、四條金吾許御文、四信五品事
寛永年間
国立国会図書館書誌ID000007282381

上記二書については、「国立国会図書館所蔵貴重書解題」第2巻(古活字版の部)という小冊子で解題されていて、デジタル版を館内端末で閲覧できるが、録内御書の刊本であるという説明はなかった。上のような誤植もあって、日蓮の遺文集の編纂経緯に明るい司書は少ないと見て、やむを得ないと思う。国立国会図書館書誌ID000001233429

なお、書誌情報は『日蓮文集』(兜木正亨校注、岩波文庫)解説等を参照した。■